KORG 01/WFD 修理、フルオーバーホール

私が楽器修理を始めたきっかけはソフマップで買ったジャンクの01/Wでしたねぇ。もう12年も前の話です。
その間に01/WについてはほぼほぼFDですが5台ほど修理販売してきました。
今回触るのは数年ぶりになります。
この記事を書いている2021年、つまり01/Wが発売されてから30年近くなってくると12年前とか以前はあまり出てこなかった故障物件が多くなってきます。そりゃそうですわな。あなたのおうちに30年動いてる電化製品どの程度あります?殆どないでしょ。シンセサイザーは楽器ではありますけど、デジタル・アナログ関係なく電化製品で有ることには変わりないのでいろいろなところが劣化してきます。
その中には劣化しやすい箇所、しにくい箇所がいろいろあります。この劣化しやすい箇所が俗に言う「持病」です。
持病が発生するまで数年なのか、30年後になるかは機種によって違いますから一概に言えるようなもんじゃないです。

と、前置きが長くなりましたがKORGの01/Wさんも持病というか頻出する故障箇所がちらほら出てきてるようです。
このあたりの情報は日本国内では殆どないんで海外のフォーラムとかボケーッと読んでたりすると結構あちらのアニキたちは自分たちで解決しようと知恵を絞り合ってやり取りしてるんで情報の宝庫っすよ。
日本の人らは楽器は楽器や以外にはさわらせん!っていうひとが多いのか壊れたら寿命とするのかわからんすけどあんまり情報ないですよね。まぁ、情報持ってながら出さない自分が言うのもなんですけどね。

前置きが長い上に話がそれてます失礼。

入手時の症状

入手時の症状です。

  • 電源が入らない
  • 取れないテープ痕がガッツリ

ってとこです。要は電源が入らないんでその先の詳しい状況はわからんってことですね。

このディスプレイの下が手強いです。強力布テープ貼ってそこにパッチセットとか書いてたんでしょうね。でのりが残ったまま十数年放置されたような状態でもうかっちんかっちん。ディソルビットとかかけても全く溶けない。
もう完全に樹脂の固まりになっちゃってました。どうしようかと悩みましたが、マイナスドライバー的なもので本体に触れない絶妙な作業で全部剥がしました。右のテープ痕はアルコールで割と簡単に取れました。これで表面はきれいになりました。

電源が入らない

主題はこっちですね。電源が入らない、というかつないだら一瞬起動したんですよ。すぐ落ちましたけど。
何回か繰り返してみたら電源入ったり入らなかったり。入らないほうが多い感じです。

この頃のシンセってのはシステム駆動用の+5V、アナログ系のオペアンプで使う±12?15Vの3電源(とアナロググランド(センタータップ))が存在するやつ多いです。ほんでもって起動しない、っていう場合はシステム側の5Vの状況を見てやればいいわけです。アナログ側電源は基本壊れてても起動くらいはする場合が多いんで。

ほんでもって起動しない状態で5Vラインの電圧測ってみたら2Vくらいしか出てない状態でした。
レギュレーターかなー?とも思いましたけど基本こいつは古典的なトランス+ブリッジダイオード、平滑コンデンサ、レギュレーターの構成の電源なんでそうそう壊れません。コンデンサ以外は。
とりあえず目視ではコンデンサは問題ないようだったんで裏を見たらはんだ割れしてるところあったんでそこをちょいちょいってやってみました。

はい、出ました5Vぴったんこ。組み込んで起動してみるとちゃんと動いてました。

液晶コントラストが薄いー。これもこの頃の国産シンセではほぼシェア100%なOptrex制DMF5005系の持病です。
今回は液晶そのものを交換するんでこいつは修理しないでそのままクビです。

起動したから電源周り終わりー、とも言ってられないのが昨今の情勢(?)でして、海外ではこの電源の平滑コンデンサの死亡例が結構増えてきてるみたいなんです。ということで全部交換しました。

長年修理やってると追加発注とかしなくてもこのくらいのコンデンサは手元にあるもんですなぁ・・・。
と言うことで放熱グリスもサンハヤトのやつを薄く塗り直して電源シャーシに組み込んで電源は完成です。

メインボード点検、コンデンサ交換

最近はコンデンサ交換しないと不安で売りに出せないです。
昔はあんまやってなかったんですけど、壊れてるのいっぱい見てくるとアルミ電解コンデンサが全部爆弾に見えてきてしまってね・・・。今回は関係ないですけど表面実装の奴らなんて見かけたら駆逐してしまいたいくらいです。

まぁ、そういうわけでボードにはなんも問題ないんでコンデンサ交換し終わった写真です。両極性コンデンサにはいつもどおりニチコンのMUSE-ESです。てかここと限らず使ってるコンデンサはほぼほぼニチコンです。個人的な好み?かな。あとはとか東信とかニッケミとかPanasonicとかいろいろありますけど、基本日本メーカーで揃えてます。
日本メーカーだから日本製とは限らないし、日本メーカーでもやらかすときはやらかすけどとりあえず、なんとなくです。毎度書いてますがMUSE-ESにしたところで音の変化とかはわからんです。中身にこだわるくらいなら音作りをキメてこうぜ諸兄。

メインボードはいいとして、ジャックボードの裏をみたらちょっと気になるところが。

これ、ジャックのはんだなんですけど軽くヒビ入ってます。というか電源もでしたけどなんとなくこういう大きい面積の箇所のはんだが少なめに感じました。ほかにもいっぱい01/Wいじってますけどこういうのは初めてかも。
とりあえずこの辺ははんだ盛直して置きました。この機種とかプラグさしてプラグに衝撃加わったときとか直接ジャックのはんだ接合箇所に力がかかるんで多めに盛っておきました。

タクトスイッチ交換

タクトスイッチは基本全交換です。別にきき悪いところはなかったんですがこんなもん時間の問題なんでちゃっちゃと全交換です。KORGはステム長9.5のやつずっと使ってるんでこのサイズのは数百単位で仕入れてますんでこれも追加発注とかしないで全数手元にありました。

アルプス制なんでちゃんと「タクトスイッチ」です。押下トルクもおんなじと思われるやつです。
やたらとフラックスがガビガビに残ってたんで洗い流しときました。(手前側が濡れたように見れるのはアルコールで流れた残滓の残滓)

LCD交換

手元にBlack Whiteの反転液晶しかなかったんでそいつ使います。

とりあえずバラック状態で動かしてみてOKなんでここは終了。どこの液晶でどうやって換装してんの?とかは自分で調べてください。
は無機ELシート換装してましたけど、12年前に修理したテストベッドと言うなのうちの子の01/WFDは7年位でもう風前の灯レベルの照度に落ちてるレベルで、現在は部屋暗くすると光ってるのがやっと分かるレベルなんで、今後長く使ってもらうには無機ELというものそのものを選択肢から外しています。カスタム液晶で同しようもないKORG X3みたいなのもいますけど、おいおいアイツラもなんとかできないか考えときます。好きなマシンなんでね。

こいつと限らずTシリーズからX3/2までのマシンなんですけど、ディスプレイ面の透明プラスチック(詳細材質不明)が激しく黄ばむんですよ。

結論から言うと、この黄ばみは取れません。表面研磨、ディートで表面とかしてみる、過酸化水素+紫外線(UV-C)を照射する、という黄ばみ系全部試してみましたがだめでした。真横から透かしてみるとわかるんですけど、透明なところがおくまで全部黄ばんでる状態です。素材そのものが劣化して黄ばむみたいなんでもうどうしようもありません。
頭にきたんで小キズ取りがてらテカテカにしてやりました。

FS鍵盤リビルド

さて恒例行事のFS鍵盤リビルドです。いくらなれても集中力MAXでやっても5時間くらいはかかります。

今回は電源はいらなくなってしばらく放置してしまわれてたかして鍵盤の隙間のゴミとかはものすごく少なくて過去イチきれいだったかもしれません。ただ、グリス固着、グリス切れでスカスカネトネトでしたけどね。
掃除して組むだけなんですけど、黒鍵に一部キズとかあったんでそのあたりをなんとかしときました。
鍵盤に傷あると弾いてて気持ちいいもんじゃないですからね。

黒鍵の先端が削れてる状態で、これはコンパウンドと電ドラにつけたフェルトバフでなんとかしました。

この鍵盤は真ん中に結構深めな傷が入っているんでコンパウンド程度ではなんともなりません。
棒ヤスリで傷が消える程度まで削ります。このとき傷のところだけ削るとそこがへこむんで全体的に一皮はぐようなイメージでやります。その後、耐水ペーパーの番手上げて、コンパウンドも番手低い方から上げてー、っていうふうに磨き入れたのが次の画像です。

磨きすぎてツヤツヤしすぎた感があるけどこんな感じで傷を消しました。

あとはグリスアップして組み立てて慣らし打鍵(手動)して完了です。

昔はクレのシリコングリースメイトを使ってたんですが、あれは合いませんでした。うちのテストベッドマシンではもうスカスカで状態が悪くなってます。そんなことでいまは違うグリス使ってます。

その他調整修理

大物はこれで終わりです。
ただ、いろいろ触ってたらベンダーのスティックY軸動作に違和感が。
アレだろうなーということでばらしてみたらやっぱりアレでした。

可変抵抗のナットの緩みです。YAMAHAのホイールとかでガタつくとか言うのも原因はこれです。
これは強めに増し締めして問題なし

あとはベンダー周りに小さい傷が多いなーということで大きめのところはヤスリで落としてあとコンパウンドかけてたんですが、やりすぎました。鏡面仕上げしちまいましたわ。この阿呆が。こっちだけ鏡面仕上げってのも何なんで、右側も磨いときました。

これあれだ、よく高級機種であるピアノブラック言うやつや。ただ、ABSを研ぎ出しただけで表面保護とかしてないんでそこんところはご勘弁を。。。

あとは出力でかくてなんか音割れするなどうしよう、とか考えてたんですけどよく見たらうちのAudioI/Fのソフトミキサーが+6dBになってマスターで割れてただけでした。私が馬鹿なだけでマシンは悪くないです。なんともないです。

液晶はこんな感じです。黒白といってもどちらかといえば濃紺って感じです。黄ばみがかえっていい仕事して普段よりも黒っぽく見えてます。嬉しい誤算と言いたいけど液晶周りはバッチリ黄ばんでるんでうれしかないわな。

あとはフロッピーまわりの動作確認して・・・

一応、起動スプラッシュにSMFって書いてるんだけど念の為ROMバージョン確認してみたり

これは特殊起動シーケンスで立ち上げたときだけに見られる表示ですけど、ROMは最終の#62が入ってました。

これで完成です。

右サイドぱねるはちょっと傷多めです。ここやり始めるときりがないんでこのままでかんべんしてください

で、このマシンは売るんですが動作確認で使ったフロッピーディスク2枚をおまけで同封します。
説明書はKORGのサイトにPDFがあるんでそちらを見てくださいってことで。